軌跡
「はいよ。お雑煮、お汁粉、どっちがいいかい」
「じゃおれは両方。お前は?」
「……私は、お汁粉で」
「じゃ、用意するから待ってな」
 そう言って立ち上がった祖母の腰は、幾分曲がっていた。以前会ったときは、真っ直ぐ伸びていたのに……。アルマジロのような背中は、祖母をより一層小さく見せた。そのことが、睦也の心に大きな罪悪感をもたらし、同時に、時の流れの非情さを目の当たりさせた。
「おれらも手伝うよ」
「長旅で疲れただろ。適当に座っててくれればいいよ」
 笑顔で制され、二人は炬燵に座り込んだ。その笑顔が、切なかった。
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