軌跡
「次にギターの」
「太輝です。太い細いの太いに、輝くと書いて太輝です」
 その勢いに、ヒロポンは一瞬たじろいだ。さすが太輝、神経も太い。
「君はハードロック好きかな?」
「はい、X JAPANが大好きです」
「Xか、ところどころにそんな雰囲気が出てるんだよね。君たちのバンドはポップ路線だよね? 君は先ず、もっとポップなフレーズを勉強するべきだ。ベースはアツヤ君だったね。で、ドラムが……」
「あっ、秀樹と言います」
 太輝とは対照的に、秀樹は声が上擦っていた。
「二人はリズム隊だから、曲を縁の下で支えている訳だ。土台がシッカリすれば、歌もギターも各段に演奏しやすくなるの。二人に共通して言えるのは、まだリズムを体全体で感じ取れていないこと。足と手だけでリズムを取ってる、って感じ? 先ずは体全体でリズムを刻むように意識して」
 見た目とは対照的に、その指摘は正にプロの目から見たそれだった。たった一度のライブを見て、いや、デモテープを聞いた時点で、既に見抜かれていたのかもしれない。
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