軌跡
「こんな朝早くから何の用だよ」
 こんなことになるなら、番号を変えておけばよかった。電話を取ってしまった後に後悔しても、後の祭りか……。
「……睦也かい。元気に、してるかい?」
 何年振りかに聞いたその声は、酷く疲弊していた。罵声を浴びせてすぐにでも切ってやろうと思っていたが、その勢いは急激に萎えていった。
「そんな社交辞令を言うために、わざわざ電話してきたのかよ」
 少しの沈黙が、気まずかった。
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