軌跡
 ふざけるな、虫がいいにも程がある。あんな奴、どうなろうが知ったことか。あんな工場、潰れちまえばいいんだ。
 睦也は呪いのように繰り返し呟き、奥歯を思いっきり噛み締めた。
 せっかくの休日が台無しだ。眠気もどこかに飛んで行ってしまった。腹の虫は二日酔いも手伝い、最高に機嫌が悪い。持て余した時間、度重なる心労、追い討ちをかけるような電話、こんなときに傍にいてくれる存在がいれば……。
 脳裏に浮かんだ顔を、睦也は素早く掻き消した。
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