軌跡
 携帯の電源をオンにしたのは、夕方を過ぎた頃だった。この時間まで何をやっていたのか、定かでない。思いだそうとしても、それは霧がかかったようにぼやけていた。
 新着メールが二件、一件は見知らぬメールアドレスからだった。中身を開いて、それが母親からのものだと分かった。
『一度お見舞いにきてください』
 句読点も絵文字もない寒々とした文章。
だが、どうやって睦也のメールアドレスを知ったのだ? 
 その答えは、もう一通のメールを開いて判明した。
『何度電話しても通じないから、メールを見たら電話をくれ』
 点と点が繋がり、線となった。
 賢介まで巻き込みやがって……。
 新たな怒りが込み上げ、それを発散するように通話ボタンを押した。
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