軌跡
 翌日バイトを終えた睦也の帰宅途中、タイミングを見計らったかのように電話は鳴った。それは先日同様、必要なまでに鳴り続けた。
「まだ何かようがあんのかよ。賢介にまで迷惑かけやがって」
「ごめんなさい。他に宛てがなかったの。……今、お父さんが隣にいるの」
 電話を切ろうとした睦也の行動を察してか、その声は続けた。
「待って、切らないで。お願い、どうしてもお父さんが直接話したいって」
 黙ったままでいると、弱々しい声が聞こえてきた。
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