軌跡
鎧の隙間に施した溶接が、ドロドロと溶けだす。「頼む」、その一言が溶かしているのだ。
傍若無人、唯我独尊、そんな四文字熟語を生きる標本にしたような男が、人、それも実の息子に対し、あんな弱音を発させたことに対して、睦也は動揺していた。それは老いのせいなのか、今回の事故のせいなのか、それは分からない。確かなことは、父親が人前で弱音を吐いたのは、これが二度目ということだけだ。
傍若無人、唯我独尊、そんな四文字熟語を生きる標本にしたような男が、人、それも実の息子に対し、あんな弱音を発させたことに対して、睦也は動揺していた。それは老いのせいなのか、今回の事故のせいなのか、それは分からない。確かなことは、父親が人前で弱音を吐いたのは、これが二度目ということだけだ。