軌跡
 睦也はそんなことを考えながら、暗闇の中、一人ウィスキーのロックを舐めていた。だが、いくら何を考えようとも、答えは変わらなかった。
 あの人には悪いと思う。だが、継ぐことは出来ない。その答えが変わることもない。あんな奴らの何十倍、何百倍も大切なものを捧げてまで、おれは今も、自ら選んだ道を進んでいるんだ。高校を卒業して家を飛び出したとき、他人という烙印を押されたのならば、今度はおれからその烙印を押してやる番だ。孤独も感傷もない。一度失ったものを、二度失うことはないんだ。
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