軌跡
 翌日、睦也は無心で働いた。時間があるときは積極的に仕込みをし、それが終われば掃除などを始めた。
 何も考えたくない、誰とも話したくない。
 体を動かすことで、全てを紛らわした。
 時計の針が六時を指し、遅番のアルバイトの子が厨房に入ってきた。帰らなくては……、そう思うと、気が重かった。帰っても、長い夜が待っているだけだ。今後を考えれば課題は山積みだ。個人練習にホームページの更新、無料配布のデモテープの作成。だが今は、何もする気になれなかった。
 裏出口の扉を開くと、いつかのように声をかけられた。
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