軌跡
 祖母がこの世を去ってから、早くも二週間が過ぎようとしていた。だが、睦也の心境に変化はなかった。むしろ、悪化しているといった方が正しいだろう。人前での自分と一人のときの自分、そのギャップに疲れきっていた。
 朝になればバイトに行き、休みの日は練習。その練習でさえ、行くのが億劫になっていた。
 今日こそはいつもどおりの演奏が出来るだろうか? 次の練習には、ヒロポンさんも顔を出す。メンバーを、ヒロポンさんを、これ以上失望させる訳にはいかない。
 自分を追いつめれば追い詰める程、睦也は逃げたいという衝動にかられ始めていた。だが、時は待ちも、何の解決ももたらさないままに、流れて行った。
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