軌跡
「う~ん、なんかベースラインがパッとしないよね。特にサビ、難しいことすればカッコいいって訳じゃないよ」
 それは、賢介の作ってきた新曲のアレンジをしているときのことだった。睦也はパターンを変え何度か試したが、ついにヒロポンを満足させるプレイは出来なかった。そして、練習終了後の捨て台詞が、
「良くはなって来たけど、最高、って感じではないよね。次までに雰囲気の似た曲を聴いて、勉強してきて」
だ。
 おれだって考えて演奏してるんだ、それを違うと言うなら、もっと具体的にこう弾け、ああ弾けと言ってくれてもいいじゃないか? 
 睦也は内心そう毒づいていた。
 睦也、トイレで用を足していると、後ろから声をかけられた。声のする方に振り向くと、そこには賢介が立っていた。
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