軌跡
 居酒屋に入って一時間が過ぎた。ビールを三杯ずつ飲み、睦也はウイスキーのロックを、賢介は焼酎のロックを手にしていた。
 その間、二人は終始雑談を交わすのみだった。酔いも手伝い、睦也は肩に張っていた力を徐々に緩めていた。賢介の前で緊張すること事態が、間違っていたのだ。
「こないだ、優から連絡があったんだ」
 賢介は驚きの表情をあらわにした。別れてからの月日を考えれば、無理もない。
「優ちゃん、なんだって?」
 睦也はメールが来た経緯、その結末を語った。
「そっか、それで最近、気落ちしてた訳だ? でもそれだけなのか? おれにはそれだけとは思えないんだけど」
 それだけではない。だが、例え賢介であっても、この真赤に染まったココロをさらすことは出来なかった。
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