軌跡
「ヒロポンさんは別として、太輝も秀樹もお前の身の上は分かってる。お前さえよければ、おれからヒロポンさんに説明するよ」
「太輝と秀樹も休んだ方がいいと言ってんのか?」
 そうだとしたら、いつの間に話し合ったのだろう? 
 疎外感からそう思った訳ではない、そこまで迷惑をかけていることが、申し訳なかった。
「いや、これはおれの独断だ」
 それを聞いて、睦也は少しホッとした。
「だったら、あの二人がどういうかも分からないだろ?」
「あの二人なら分かってくれる」
「ライブはどうすんだよ?」
「ライブは、……アコースティックバージョンでしのぐ」
「そんなの無理に決まってんだろ! 次のライブまで時間だってないんだぞ」
 睦也は苛立ちを隠せずに、声を荒げた。
「睦也、お前が逆の立場なら、おれに同じことを言ったんじゃないのか? おれは早く元のお前に戻ってもらい、全力のLocusとして活動したいんだ。誰かが参っていたら、それをみんなでカバーする。それがバンドだろ?」
 そうだとしても、メンバー、そしてヒロポンさん、ライブハウスのスタッフ、ライブを楽しみにしているファン、多くの人に迷惑をかけてしまう。
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