軌跡
 思えば、後悔ばかりを重ねてきた。優のことだけでなく、婆ちゃんのことも、音楽活動に関しても。
 勢いだけで東京に飛び出し、バイトとバンド活動に明け暮れ、夢を追っている、そのことにいつの間にか満足していた。この六年間を、無駄にしていたんだ。いや、もっと前から無駄にしていた。音楽を志したそのときから、もっと真剣に注力していればよかった。あの頃は今よりも、遥かに時間を自由に使えた。それなのに、遊びと女のケツを追うことに必死で、真剣に取り組んでなどいなかった。そんな姿しか見ていなかったからこそ、両親も反対したんだ。おれの姿は、中途半端にしか映らなかったんだ。そして、実際に中途半端でしかなかった。若さゆえの、根拠もない大義名分を振りまわすだけで。
 ……全てのつけが回って来たんだ。そしてそれを、清算するときがやってきたんだ。
 人生の岐路、睦也はそこに佇んでいた。
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