軌跡
そう毒づきながら、汗と油塗れの制服に着替えた。高校を卒業してすぐに上京してきた睦也にとって、大学生の夏休みなど、別世界の行事でしかない。
「おはようございます」
厨房の扉を開くと、夜勤明けのゲンさんの姿があった。
「オゥッ、もうそんな時間か。じゃ、おれはあがらせてもらおうかな」
鼻歌交じりで睦也の横を通り過ぎて行く、通称ゲンさん。正確な年齢は分らないが、四十近いことは間違いない。彼の姿を見る度に、こうはならないぞ、そう胸に誓うが、そこに根拠がないことに最近気付き始めてしまった。
お疲れ様です、その背中に呟くと、オーダーを知らせる機械音が鳴り響いた。
「はいはい、秋のお粥御膳ね」
湯銭機にレトルトのお粥を放り投げながら、思考回路を切り替えた。朝から考えるようなことではない。
「おはようございます」
厨房の扉を開くと、夜勤明けのゲンさんの姿があった。
「オゥッ、もうそんな時間か。じゃ、おれはあがらせてもらおうかな」
鼻歌交じりで睦也の横を通り過ぎて行く、通称ゲンさん。正確な年齢は分らないが、四十近いことは間違いない。彼の姿を見る度に、こうはならないぞ、そう胸に誓うが、そこに根拠がないことに最近気付き始めてしまった。
お疲れ様です、その背中に呟くと、オーダーを知らせる機械音が鳴り響いた。
「はいはい、秋のお粥御膳ね」
湯銭機にレトルトのお粥を放り投げながら、思考回路を切り替えた。朝から考えるようなことではない。