海の思い出
悲しみを越えて
今から10年前。
あたしは家族で
海に来ていた。
その海は田舎の
じいちゃんの家の
近くの海だった。
そこはとっても静かなとこ。
人はいつもいない。
水は透き通ったような
綺麗な青色。
とっても素敵な場所だ。
あたしが6歳のとき
そこの海に家族で来た。
お父さんとお母さんが
おじいちゃんの家に
お弁当とタオルを
取りに帰ってたとき。
一人っ子のあたしは
誰もいない海に
一人で遊んでいた。
お母さんに
「ママがいない間は
水の所に行っちゃダメよ。」
って言われていた。
だからあたしは
はしっこの方で
貝殻を拾ってたんだ。
すると後ろから
足音が聞こえてきた。
お母さんがこんなに
帰ってくるはずかない。
怖くなったあたしは
振り向かなかった。
足音はあたしの後ろで
止まった。
「ねぇ。」
声をかけられた。
その声はとても幼い
可愛らしい声。
あたしは振り向いた。
そして会話をしたんだ。
そこからは覚えていない。
ただ、バッチを貰った。
キラキラしていて
鳥の絵が書いてあるバッチ。
それは今でも持ってる。
バッチをくれた子は
男か女かも覚えていない。
ただ名前は確か、
ユウ。
あたしはユウから貰った
バッチがとても
気に入ってて、
ずっと持っている。
あたしは部屋の
机を整理してる時に
見つけたバッチを見て
懐かしい記憶が
よみがえった。
「友里音ー!!
お昼ごはんよー。」
時間は12時。
お母さんの声が
一階のリビングの方から
聞こえてきた。
「あ~い」
返事をしながら階段を
下りるあたし。
「わーい。
ホットケーキだぁー。」
今日のお昼ごはんは
ホットケーキ。
ハチミツがだっぷり
かかったホットケーキを
口にいっぱい頬張った。
「いよいよ明日ね。」
お母さんは、
ワクワクしたような
顔で言った。
「ほんとだー。
明日ちゃんと起こしてね。」
「なーに言ってるの。
自分で起きなさい。
明日から高校生よ!!」