オカンの館
 
オトンの顔は知らん。

もの心ついた時から、オレは最強オカンと、最強姉チャンに見守られて(涙)暮らしてきた。


ある日、学校から帰ると、いつも昼間は爆睡しとるはずのオカンが、鏡の前で念入りに化粧をしとった。


「お母チャンどっか行くん?」

「おかえり、竜太郎。1時間もしたら帰って来るから、おとなしいに待っといてな」

「どこ行くん?」

「面接や」


言いながらオカンは、真っ赤な椿の絵が書かれた着物の帯を、ギュッと結んだ。
 
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