サクラノコエ

「もし、急になにか都合が悪くなったりしたら、ここに電話くれればいいから。だから『約束』しよ」

理紗から約束に対する恐怖心を取り払ってやりたくて、俺はあえて『約束』という言葉を口にした。

「約……束」

「指、出してみ」

「指？」

自分の指を見ながら、どうしていいか分からないというように人差し指を出す理紗がおかしくて吹き出しながら

「小指」

と、理紗の差し出した右手を取り、人差し指を折り曲げて小指を立て、指切りの形を作ってやる。

「指切りな」

指切りなんてガキくさい気もしたけれど、理紗を少しでも安心させるためになんとなく必要な気がした。