サクラノコエ
(2)変な女


9時過ぎに起きると、姉ちゃんは早々と結婚式出席のために美容院に出掛けたらしく、もうすでに家にはいなかった。

パジャマ姿のままプリキュアのDVDを見て、一緒になって決めゼリフを口にしたり、歌ったりしている桃香のテンションは朝からMAXだ。

「ぴんくのはーとは あいあるしるし! もぎたてふれっしゅ きあぴーち!(ピンクのハートは愛ある印! もぎたてフレッシュ キュアピーチ!)」

起き抜けの寝ぼけた頭にこのテンションはちょっとキツイ。

「ゆうちゃん、もも、かっこいいでしょ~」

「かっこいいなぁ~。本物のキュアピーチみたいだぞ」

よく分からないが適当に話を合わせて言葉を返すと、桃香は得意気に笑い再びテレビに釘付けになった。

俺に対して怒っている様子も、怖がっている様子もないようだ。

どうやら、昨夜の俺と姉ちゃんの喧嘩に関しては覚えていないらしい。
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