サクラノコエ
「悠人くんはこういうところよく来るの?」

「え? なんで!?」

「お料理、詳しいから」

理紗の質問に軽く動揺してしまい、それを悟られないように、目の前に置かれた水のグラスを手に取り一口飲んだ。

イタリアンなんて、女とのデート以外ではあまり利用しない。

普通の女ならそれぐらいのことは分かりそうなものだが、全く分かっていないような理紗に、まさか「元カノと行って以来」だなんて言えるわけがない。

「あ、最近ちょっと興味があって」

俺は内心焦りながらも、サラリと答えた。

話題を変えたかったとはいえ、イタリアンに興味があるのは嘘ではない。

「興味?」

「うまくいけば、イタリアンのレストランに就職が決まるかもしれないんだ」


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