サクラノコエ
母さんがこんなふうに俺の側に来るときは、決まってなにか話があるときだ。

案の定、物言いたげな顔をしながら、朝メシを黙々と食べる俺を見てソワソワしている。

母さんはいつもこうだ。言いたいことがあるならすぐに言えばいいものを、気を使っているのか、なんなのか「話があるの」オーラを振り撒く。

「なんだよ?」

面倒くさいと思いながらも、その空気のウザさに堪えられず、先に口を開くのは大抵俺だ。

「聞いたよ、お姉ちゃんから。昨日お姉ちゃんのこと責めたそうじゃないの」

やっぱりそれか……

「悠人の言いたいことは分かるけど、お姉ちゃんは向こうで頑張っているんだよ。全く知らない土地に行って、一つの家族の中にポンと違う環境で育った者が入るって、とても心細いものだと思うの。だから、お母さんのパートが休みのときぐらいは、息抜きさせてやらないと……」

そこからはじまり、母さんは俺が朝飯を食べているあいだ、延々と一人で話続けていた。

話ながら一人で盛り上がって、涙ぐんだりして……

お陰で朝飯は食った気がしなくなるし、朝っぱらからテンションガタ落ち。



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