サクラノコエ
バイトの後は久しぶりに和樹に会うことになっていた。
店を出て和樹に電話を掛けながら、駅へと足を向かわせる。
「おぅ! 今からそっち向かうから」
昨日、美優とのことを一応「紹介元」である和樹に軽く報告しておこうと
『美優と終わった』
と、夜中にメールを送った。すると和樹から
『明日バイトの帰りに俺の家(おれんち)寄って』
という返事が返ってきた。
どうせ面白半分に、事の経緯を根ほり葉ほり聞こうということだろう。
女に平手打ちを食らったなどというみっともない話は、あまり人に話したくないことなのだが、和樹は別。
見た目はともかく、昔から「カッコつけ」だった俺は、気心の知れた仲間の前でも自分の恥になるような話はしなかった。
しかし、自分でも何故かは分からないけれど、和樹にだけは自分を飾らず色々な話ができた。
本人に言うと図に乗りそうだから言わないけれど、多分俺は和樹が大好きなんだろう。(なんだか誤解が生じるような感じだけれど、俺は間違ってもホモなわけではない)