サクラノコエ
(9)心
「あ、悠人おかえり。意外と……」
俺を出迎えた母さんの声は、ほとんど耳に入っていなかった。
想像もしていなかった状況を、頭の中で処理することが出来ない。
「あれ? あんた、大丈夫!? 顔真っ青だよ。熱でも……」
俺の混乱などお構いなしで無遠慮に額に当ててきた母さんの手を、俺は勢いよく振り払い
「うるせぇな! 放っとけよ!」
と、言い捨て部屋に閉じこもった。
部屋に入ると気が抜けたのか、強ばっていた体の力が一気に抜け、ドアにもたれ掛かりながら崩れるようにその場に座り込んだ。