サクラノコエ
「悠人、早くご飯食べなさい」
「うん」
午前6時。今朝は桃香もまだ寝ているようだ。
母さんは俺と親父の弁当を詰める手を一時止め、いつものように席に着いた俺の前にご飯とみそ汁を運んでくる。
……って。
「あれ? パンは?」
「あ、ゴメン。買い忘れちゃって」
「なんだよ! パン食いたかったのに」
「ゴメン、ゴメン。今日は買っておくから」
母さんは俺が頼んだ物をよく買い忘れる傾向がある。
今朝はすっかりパンの気分だったというのに。最悪。