サクラノコエ
「まだ残ってんの?」

「いえ。ちょっと大事な宿題を忘れてしまって。慌てて取りに来たんですけど、なんとなく取りに行きづらくて」

「まぁ……いろんなのがいるからな」

「え!? あ、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて」

俺の言葉に、中原は顔を真っ赤にして慌て始める。妙に真面目で笑ってしまう。

「わかるよ。俺も昼間学校に来たりするの嫌だしな」

「そ、そうですよね!」

「クラスどこ? なんなら、俺取ってきてやるけど」

「そんな、悪いですよ」

「そんじゃ、中原がよければ、一緒に行ってやるよ」

チラホラと登校してきた定時制の生徒が、制服姿の中原をジロジロと見ながら通り過ぎていく。その雰囲気に、中原は居心地が悪そうに

「……お願いします」

と、小さな声で言った。
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