サクラノコエ
俺の言葉が腑に落ちないといった感じで、和樹は少し考えるように黙り込み、大きなため息を一つ付くと

「体調……悪いと思ってんなら、ちゃんと医者行けよ……」

と、再び俺を真っ直ぐ見据えて言った。その表情は、凄く辛そうに見えた。

「そうだな」

俺は和樹を安心させようと、そう言いながら再び笑ってみせる。

「悪ぃ。心配掛けて」

「……ホントだよ」

俺のことを心配して、母さんが和樹に助けを求めるように連絡を入れたと知ったのは、もっとずっと後のことだった。

自分では気付かなかったけれど、どうやらこの時の俺は、相当不安定に見えていたらしい。

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