サクラノコエ
その声に反応した店の入り口付近にいた客や、通りすがりのおばちゃんが、不思議そうな顔をしてジロジロと俺を見ていく。

こんなバカでかい男が、こんなちっちゃい女に頭を下げられてるなんて、なんだか俺って凄く悪い奴っぽくね?

「馬鹿、お前なにやってんだよ!?」

こんなことになるなら、もっと人気のないところで待ち合わせればよかった。

「ちょ、こっち」

俺は焦って思わず右手で理紗の肩を抱え込み、そのまま早歩きで人気のない場所まで移動した。理紗も戸惑いながら、俺にされるがまま移動する。

「なんだよ、お前。なんでいきなりあんなこと」

訳が分からず混乱する頭でそう尋ねると、理紗は俯いたまま

「怒っているのかと思ったから。メールのこと」

と、ポツリと口にした。
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