サクラノコエ
一つ目の角を曲がると、いつも理紗が俺を待つコンビニが見えてくる。

距離があるから、いつも理紗を確認するまで少し時間がかかるのだけれど、今日は黄色い傘のお陰ですぐに存在を確認できた。

俺の姿を見つけると、理紗はいつも両手を大きく振ってとても嬉しそうに笑う。

毎回あの姿を見るたび、まるで何年か前にドラマで見た「忠犬ハチ公」のようだと思う。

さしずめ、その両手はしっぽの代わりというところだ。

そのせいか、理紗への扱いもついハチ公的になってしまい

「おう!」

と挨拶をしながら、つい頭を撫でてしまう。

さすがに「ヨシヨシ」とは言わないけれど……

「店の中で待ってればよかったじゃん。風邪ひくぞ」

「うん。でも、松永さんが気付かないといけないから」

「体冷えてねぇ? 雨だし、たまにはどっか入って話すか?」

「ううん。いつもみたいに学校まで一緒に歩くだけでいい」

「そっか?」

「うん」

一緒に歩くだけでいいなんて、やっぱり理紗の感覚は中学生みたいだ。
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