サクラノコエ
「見て、見て!」

「ん?」

肩から提げたカバンからデジカメを取り出し、首で傘を支えながら、手慣れた手つきでお目当ての写真を液晶画面に表示して俺にカメラを手渡す。

「とてもキレイだったから松永さんに見せたいと思って! 本当は実物を見せたかったんだけど、折ったらかわいそうだし」

今日の写真はきれいに咲いた青紫色のあじさいの写真だ。

「今日も散歩してたんだ」

「うん」

「お! カタツムリ付きじゃん」

「かわいいでしょ」

そう言いながら、理沙はニコニコと笑う。

最近、理沙に対して愛着が湧いてきているのか、たまに妙にかわいく見えるときがある。
< 79 / 454 >

この作品をシェア

pagetop