サクラノコエ
(5)過去の扉
──理紗。俺たちの関係って、なんだろう?
そんな疑問を抱きつつ、それを理紗に投げかけることもしないまま、俺たちの付き合いは付かず離れずの状態で細々と続き、気が付けば梅雨も明け、夏の日差しが照りつける7月半ばになっていた。
学校ももうすぐ夏休み。
今年の夏は、遊びの予定よりも就職活動や、車の免許を取るための教習所通いで忙しくなる予定だ。
『今日、教習所の申し込みしてきたよ』
いちいち理紗に報告しなくてもいいけれど……
新たな女を引っ掛けに行くのも面倒くさいし、なんとなく理紗にメールを送ってみる。
『わぁ~! いつから通い始めるの?』
返事が来たのは相変わらず3時間後。
そんな時間差のあるのんびりペースが、近ごろ心地いい。
女好きな俺が、女を引っ掛けるのを面倒くさくなるなんて。
俺も、もうオヤジかな?
『あさって。とりあえず一番はじめの学科受けてくる。早く車乗りてぇ!』
『楽しみだね♪ 松永さん、明日はお仕事?』
相変わらず、理紗は約束をしようとしない。
『そう。いつも通り』
しかし、このやりとりは理紗が俺に会いに来ようと企てているサイン。