感染列島
日本国内でも死者が5000人を越え、感染者は10000人に昇るというニュースがテレビに映し出される中、淳子から一通のメールが来た。
From; 淳子
Title 誕生日メールありがとう
和樹、誕生日メール嬉しかったよ、ありがとう!
ねえ、そういえば国内でついに死者が5000人越えたんでしょ、さらに感染者は10000人以上でまだ未確認な人も合わせるともっと増えるかもだってね。
・・・私、さっきから少し熱っぽいんだけど、大丈夫かな??
僕は最後の文章を読んだ時、一瞬背筋に寒気が走るのを禁じえなかった。
ただ少し冷静に考えてみれば熱っぽいくらいならただの風邪の可能性もある、というよりむしろただの風邪の可能性の方が高いだろう、という当たり前のことに気づく。しばらくして、僕は彼女にむけてメールを打ち始める。
To 淳子
Title お大事に
ねえ、怖いよね。ウイルスとか。
いや、まあきっと風邪だから大丈夫だと思うよ。さすがに風邪ひいてる人は10000人より遥かに多いわけだしさ。
でも一応病院に行ってみれば??外出る時はウイルスに感染しないようにしっかりマスクするんだよ。お大事に。
彼女にメールを送ってから、僕はしばらく寝転がり、天井をぼんやりと見上げた。昨年の今日は彼女と遊園地に行って、ジェットコースターが怖くて半べそをかいている僕を、彼女が馬鹿にしてきた事を思い出した。そして誕生日プレゼントにネックレスをあげたんだっけ、そんな回想に耽っていたら彼女からメールが返ってきた。
From 淳子
Title 無題
今測ったら熱8度5分もあるよ。一応和樹の言う通りうちの近くの大学病院にいってみる事にする、じゃあね!
僕は彼女に向けて、最後に一言「じゃあね、本当にお大事に」と、メールを返した。
その後、僕は本を読みながら1日を過ごした。
To be, or not to be:that is the question(生きるか、死ぬか、それが問題だ)
その言葉だけが、妙に自分の心に引っ掛かった