あなた
「ユキに、俺が、いかに怖がりで、高い所が苦手で、絶叫マシンが駄目で、へなちょこで、へっぽこで、ポンコツか、話してきたんだ。
初めて飛行機に乗った時、隣の席の女性に、手を握ってもらっていた話や、『何で私とは乗れないのよ。』と言って、無理やり絶叫マシンに乗せられそうになって、気付いたら彼女を置いて遊園地から逃げ出していて、『逃げるなんて、最低!』と言われて、振られた話なんかをしてきたんだ。
その最たるものが、バンジージャンプだって、話したんだ。」

「和樹兄ちゃん、『さいたるもの』って、何?」

「ナンバーワンって事だよ。

何十億お金を積まれても、頭に銃を突き付けられても、バンジージャンプだけは、出来ないって話したんだ。
だから、ユキは知っているんだ。
バンジージャンプをする事が、俺にとって、どんな事なのかを。

俺は、日本一高いバンジーに行って、俺がバンジーを飛ぼうとする姿を写メに撮って、ユキに送った。
そして、まさに飛び降りる瞬間、ユキに電話をかけたんだ。」

「電話なんか、かけたりしたら、スタッフの人に怒られるでしょう。」

「そこは、金にものをいわせたんだ。」

「『かねにものをいわせた』って、何?」

「お金を渡して、言うことを聞かせる事だよ。
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