あなた
「中1の時、私達三人同じクラスだったでしょ。
田中君、私の事いつもいつも見てた。」

「嫌じゃなかったの?」

「全然、嫌じゃなかった。
むしろ、嬉しかった。
私が目線を合わせると、露骨に目をそらすんだ。
そして、『全然見てません』という態度を取るんだ。
私、それが、おかしくておかしくて。
一度だけ、田中君が目をそらす前に、私のできる限りの笑顔をして見せたんだ。
田中君も、それに気付いてくれて、目をぱっと開いてものすごい笑顔になっんだ。
その時、誰だったか忘れたけど、田中君の後ろにいた男子が、私に話しかけてきたんだ。
『何で、今、話しかけてくるのよ。』と思って、田中君の方見ると、案の定『自分に向けられた笑顔じゃなかっんだ。』と思っていた。
喜びが大きかった分、すごくがっかりしていた。
田中君、かわいそうだった。
私、田中君に酷い事したんだ。
< 2 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop