あなた
和樹さん、本当、美人に弱いんだ。
すぐ、好きになるんだ。
すぐ、告白するんだ。
年上の男性に、こういう言い方するのは、失礼なんだけど、和樹さん、可愛いんだよね。
付き合った人、結構いるんだ。
まあ、すぐに振られるんだけど。
和樹さん、男としては、どうかなって思うんだ。
自分の良い所、見せようとしないし、好きな人だけでなく、誰にでも優しいし。
また、自慢になっちゃうけど、和樹さんのバカみたいな優しさを、受け入れる事が出来るのは、私ぐらいなんだ。
でも、あの人は、どうなんだろう?
和樹さんの初恋の人。
中学3年間、想い続けた人。
あの人の話をする時の和樹さんの目は、私が、心の底から、やきもちを焼きたくなるような優しい目になる。
遠くから見ているだけで、何も出来なかった人。
あの人に、会ってみたかったなあ。」

「あなたは、田中さんの思い出を語る時にも、素直になるんですね。」

「私は、もっと、もっと、和樹さんの思い出を聞いていたかった。
でも、これ以上、和樹さんに、病気の事を隠すことは、出来なかった。

和樹さんは、『俺と付き合って下さい。』と言ってくれた。
私は、嬉しかった。
本当に、嬉しかった。
でも、私と付き合う事が、和樹さんの苦しみになると思った。
和樹さんの気持ちは、同情であって、愛じゃないと思った。」
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