あなた
「田中さんにとって、あなたは、出会った時から、特別な人だったんです。

私は、あなたが、田中さんと出会う前だったら、こんな話はしませんでした。
私は、お父さんと出会う前、たくさんの恋愛をしました。
だから、あなたより恋愛を知っています。

あなた達二人が、出会った時、田中さんは、あなたが私に見せたくなる程のびっくりした顔になりました。
その時、あなたが見せたのは、笑顔でした。
田中さんは、自分に向けられる女性の笑顔が、大好きなんでしょう。
そして、笑顔の中に、その人の『人となり』を見る事が、出来るのでしょう。
田中さんにとって、あなたは、特別な人だったんです。

田中さんは、美人に弱い。
すぐ、好きになる。
すぐ、告白する。
すぐ、振られる。
でも、あなたからは、逃げ出したんです。
どんなに、後ろ髪を引かれる思いだったんでしょう。
あなたには、病気の事を知るまで、告白しませんでした。
あなたの死が近い事を知って、告白できたんです。

田中さんのたくさんの思い出を共有しているあなたが、会いたいと思う人です。
田中さんにとって、初恋の人も、特別な人だったんでしょう。
田中さんは、特別な人には、気持ちを伝える事が、出来ないんです。
田中さんの恋は、見守り続ける恋だったんです。
田中さんにとって、初恋の人が、恋の始まりであり、あなたが、恋の終わりでした。
田中さんにとって、あなたが、愛の始まりだったんです。」
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