あなた
「はい。愛でした。

和樹さんは、バンジージャンプに挑戦しました。
『付き合うって言わないと、ここから飛び降りるからな。』と言って。
和樹さんは、本当に怖がりでした。
高所恐怖症でした。
和樹さんにとって、バンジージャンプは、死以上の恐怖でした。
私の病気の事を知る前だったら、飛べなかった。
挑戦する事さえ、絶対に出来なかった。
和樹さんは、私と付き合うだけの為に、死以上の恐怖に挑戦しました。
その時、感じたんです。
和樹さんは、私が死んだ後、自殺するんじゃないかって。
そして、私の主治医の山本先生の話を聞いて、確信しました。

『田中さんは、医者である私に、ユキさんを助けて下さいと言ったんじゃないんです。
助ける方法を教えて下さいと言ったんです。
私に助ける事が出来るのであれば、ユキさんの御両親が、とっくに、お願いしている事を分かってるんです。
でも、医者の倫理に反した方法なら、何かあるんじゃないかと思ってるんです。
田中さんは、お金なら、いくらでも用意しますと言って、私の前に、札束を広げました。
そして、どんな小さな可能性でもいいから、教えてほしいと言いました。
ユキさんを助ける方法が、限りなく不可能だとしても、ゼロじゃない限り、私のどんな法外な要求にも、答えるつもりなんです。
私は、田中さんが、ユキさんを助ける方法の為なら、平気で自分の命を投げ出す人だと思いました。
私は、ユキさんを助ける事が出来ない自分の無力さを、嘆いておりました。
ユキさんの人生を、悲しすぎる人生だと思っておりました。
でも、あなたは、素晴らしい男性に、出会っていたんですね。』

『はい。世界一愛されてると、感じる事が出来ます。』
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