あなた

私は、和樹さんが、私が死んだ後、自殺を考えるのではなく、私が生きている間に考えるように、導いたのです。
本当に、酷い事をしました。
和樹さん、ごめんね。
でも、和樹さんとのセックスが、私にとって危険であるはずがないんです。
その事が、和樹さんの苦しみになるはずがないんです。
実際、和樹さんは、良くない表現ですが、マグロでした。」

「男性に対して、マグロですか。
私達の世代には、考えられない表現の仕方ですね。
でも、田中さんは、本当に優しい人なんですね。
死の恐怖は、克服できても、あなたを傷付けてしまうかもしれないという恐怖には、勝てなかった。
あなたの最初で最後のセックスは、優しいセックスだったんですね。」

「お母さん、私が、抱いてほしいとお願いしたんです。
昨日のメッセージは、全部、嘘です。」

「もう、分かっていますよ。」

「和樹さんは、一緒に死んでほしいと、お願いして来ました。
『今から、一緒に死のう。二人一緒なら、寂しくないよ。』と言いました。
私は、『自殺したら、天国に行けなくなる。天国で、私と結婚して下さい。』と言いました。

和樹さんは、表面的には、私と天国で結婚する為に、自殺しないでいてくれるはずです。
でも、心の奥で、分かっくれるはずです。
私のすべての行動が、自殺を止めさせる為だった事を。
私の本当の願いは、和樹さんに、生き続けて幸せになってもらいたいという事を。
和樹さんは、私の本当の願いを、叶えてくれるはずです。」