あなた
急いで、彼女と最後に別れた場所に戻ったんだけれど、もうそこに、彼女はいなかった。
それで、公衆電話から自分の携帯に、電話をかけた。
彼女は、電話に出てくれた。
『その携帯の持ち主です。』と言うと、
彼女は、『人質は、置き去りですか。』と言って、めっちゃ笑っていた。

『お手数をかけてすみませんが、その携帯、今から言う住所に、着払いで送ってもらえませんか?』

『それだと、携帯がない間、お困りになられるでしょう。』

『俺、青春時代を携帯なしで、過ごした世代ですので、2日3日なくても全然大丈夫です。』

『それでしたら、明日、私達が出会った駅で、待ち合わせをしませんか?
その時、お返しするという形でどうでしょう?』

『そうしてもらえると、こちらとしては、めちゃくちゃ嬉しいですが、お体の方は、大丈夫なんでしょうか?』

『明日になったら、すっかり良くなっています。』

『本当ですか!?
俺と、会って下さい。
お願いします。』

『待ち合わせの時間は、いつ頃が宜しいでしょうか?』

『俺の方は、いつでも大丈夫です。』

『お仕事の方は、大丈夫なんですか?』

『明日、仕事休みなんです。
だから、いつでも大丈夫です。』

『それでしたら、お昼の2時頃でどうでしょう?』

『はい。2時で大丈夫です。
俺と会って下さい。』

『お昼の2時に、駅前でお待ちしております。
それまで、この携帯は、人質として預からせてもらいます。』」
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