君を想うと~triangle love~
ギィっ……。


約束の時間よりも少し早くついた私はゆっくりとCobraの赤い扉を開ける。



フロアに流れるミディアムジャズとビリヤードの音。

笑い合う男女の声に、軽やかなシェーカーの音。





相変わらずCobraは大人の雰囲気満載だ。









フロアをカツンカツンと歩いていると

「伊織ちゃん!!こっちこっち!!」

カウンターから祐吾さんが声をかける。







「あっ、祐吾さん。
お久しぶりです。」







ペコンと軽く挨拶すると






「秀人から話は聞いてるよ。とりあえずココ座って。」







いつもみたいに男らしい笑顔を向けながら。
祐吾さんは目の前のカウンターを指さした。






言われるがままにカウンターへ腰かけると、祐吾さんは


「とりあえずコレでも食べてて」


と、キスチョコの盛り合わせを冷蔵庫から取り出した。







「ありがとうございます。」







祐吾さんがくれたキスチョコはひんやりしてて甘くて美味しくて。

疲れた心にその甘さが染み渡る。







「ちょっと精神的に参ってたから…、凄く美味しいです。」






祐吾さんの気づかいがうれしくて。
素直にそう伝えると、祐吾さんは困ったように笑った。

< 282 / 468 >

この作品をシェア

pagetop