君を想うと~triangle love~





「彼女は…死んだんだ。
俺とのデートの帰りに交通事故に巻き込まれてね。」






そう。

苦しそうに呟く桐谷慎。









「彼女の最後の言葉は“シン、また明日ね!!”だった。

…笑っちゃうだろ。
俺と彼女の明日は永久に来ないのに。」









桐谷…慎……。










「わかったろ?
俺は…高宮が思ってるよりずっと汚い。」


「………。」


「俺は高宮に死んだ彼女を重ねてるんだ。
……サイテーなのは俺の方だ。」







そう言って桐谷慎は立ち上がると。
私の隣に腰かけて、頭をポンポンと叩いた。








「だから…安心しろ。
こんな俺のことなんて気にしなくていい。

藤堂とのことで俺を利用したいなら好きなだけ利用すればいい。」




「…えっ…?」



「結局…、どうあがいても好きなんだろ?藤堂が。好きならぶつかれ。

後のことは…後で考えればいい。」








ああ。

やっとわかった。

桐谷慎が私に固執する理由が。







彼も…

迷路の世界の住人だったんだ。

逃れられない気持ちにがんじがらめにされて。

前にも後ろにも進めない。







彼が私に優しいのは、同じ世界の住人だったから…だ。








「桐谷慎。」


「ん…?」


「アンタは…それでいいの??」








私の幸せばかりを願って。

私だけが迷路から抜け出して。

それでアンタは満足なの??









彼の心が気になって。

ふとそんな質問を投げかけると。










「大丈夫。俺は…きっとここから抜け出せないから。
俺の心は、ぜ~んぶ天国に持っていかれちゃったみたい。」







そう言って。

桐谷慎は全てを諦めたような顔をして…、苦しそうに笑った。










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