君を想うと~triangle love~
「いいじゃん、欲張りになれば。
俺は本望だよ、伊織が俺を求めてくれんなら。」




お前がもっと好きでいて欲しいっていうなら、好きでいてやる。


それくらいの度量はあるよ、俺。








そう言ってやってんのに。

伊織はブンブンと首をふる。





「しゅーちゃんの気持ちが欲しいと思うのは…ただ怖いからなんだよ。
いつかこの気持ちが消えて捨てられちゃうんじゃないかって怖いからなんだよ。」






そう言って。

一呼吸置くと。

まっすぐに俺を見据えてこう言った。






「だけど…桐谷慎は違う。

あの人の気持ちより何よりも…、私があの人を守ってあげたいの。

愛していたいと……思うの……。」







そう言った伊織は寒気がするほどキレイだった。

凛とした大人の表情。

こんな表情の伊織を見たのは初めてで。





こんな表情をさせたのが部長なのかと思うと、少し嫉妬した。






だけど……

俺には愛して欲しいと願い、

部長には愛してあげたいと願う。







もう…

その時点で負けた気がした。





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