神よ、我らとともに
追い風を跳ね返すようにして
ノエインは馬で駆ける
左右を流れる景色の速さに目を向けている暇もなく
ポーム城だけを睨むように見つめていた
「使いに走らせた奴が愚図だったのか……それにしても煩わしい、なんということだ。一体アイスバーグとは何が目的なのだ!!」
表情にも、声にも憤りを出すことはしなかった
しかし、ノエインの心中は穏やかではない
隊長として自らの軍に対する責任を痛感し
アイスバーグという未だに掴めぬ敵
―民間人と言われているる非正規軍―に
今は敗走するしか手だてがないのだ
「……なんたる屈辱」
心なしか手綱を握る両手に力が入る
ノエインは己の下唇をぎりりと噛み
また馬を走らせ続けた