ヒトツキの恋
メールの着信音
携帯はピクリとも動かない


携帯に手を伸ばしては 伸ばした手の行き場に困り 届くのは どこかから来る切なさのみ



『着信音…ラブソングなんかにしなきゃ良かった…』


誰に言うでもないが 口に出さないと 不安に押し潰されそうになった


どうして返事をくれないの?

嫌いになっちゃったの?

もしかして…好きな人出来たの?


不毛な自問自答

どうしようもないモヤモヤを振り払うように 外に出る

冬の匂いが 鼻をつき 風と雪が肌を刺す


今のあたしには このぐらいが調度良い


これでもし 空が晴れていて

深呼吸したくなる様な暖かさなら


あたしは 蒸発してしまうだろう



ランニングを終え
洗剤の香りが残るタオルで 汗を拭く


…汗を拭く


『うぅ…』



ぽたぽた と
頬を伝うそれは
止まらなかった




『誰か 助けて』



生まれて初めて
誰かにすがりたかった
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