散らないサクラ
先の事を考えると、目の前を赤が覆う。
だったら俺はその赤から逃れなくてはならない。
……赤が、俺を塗りつぶす前に。
そして赤から逃げると、たいくつな毎日が広がっているだけ。
俺の本当に求めているものは、なんだ?
目の前の画面がフェイドアウトしそうになった瞬間。
――――ガシャン、パリン。
凄まじい破壊音とかすかに香る血の匂い。
全身の毛が逆立つ。
奇襲か、それともただの輩たちの喧嘩か。
それが奇襲だと断定できたのは、倒れこむようにして部屋に入ってきた輩の一人だった。
「そ、ちょっ……、お、……な、が、」
言い終わる前にソファを蹴り倒し、飛ぶように部屋を出る。
この部屋を出ると、広い修理工場だった場所が広がっている。
その広いなんもない工場のど真ん中、女が一人立っていた。