散らないサクラ

先の事を考えると、目の前を赤が覆う。

だったら俺はその赤から逃れなくてはならない。


……赤が、俺を塗りつぶす前に。


そして赤から逃げると、たいくつな毎日が広がっているだけ。



俺の本当に求めているものは、なんだ?



目の前の画面がフェイドアウトしそうになった瞬間。




――――ガシャン、パリン。




凄まじい破壊音とかすかに香る血の匂い。

全身の毛が逆立つ。

奇襲か、それともただの輩たちの喧嘩か。

それが奇襲だと断定できたのは、倒れこむようにして部屋に入ってきた輩の一人だった。



「そ、ちょっ……、お、……な、が、」



言い終わる前にソファを蹴り倒し、飛ぶように部屋を出る。

この部屋を出ると、広い修理工場だった場所が広がっている。



その広いなんもない工場のど真ん中、女が一人立っていた。



< 10 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop