散らないサクラ
コスモスの輩は古株の連中以外、俺と歩の出会い話を知らねえから耳を澄まして聞いているようだ。
聞いたってお涙頂戴の話でねえのにな。
「秋、……一つだけいいか」
「あ?」
歩が真剣な瞳で此方を見る。
「てめぇがココを抜けても、俺は……、俺たちはてめぇの記憶に残るか?」
何を言ってんだ、ボケェ、と言ってやろうかと思ったが、歩の瞳がまた揺れ始めたのを見てそれを飲み込んだ。
てめえの耳は番犬と対峙した日の言葉を忘れたのか?
てめえらと居られる自分を誇りに思うと、俺は言った。
いや、コイツは全部理解してる。
あの言葉も忘れちゃいねえ。
俺の言葉でもう一度肯定して欲しいンだ。
……ハッ、馬ァ鹿。
「消そうとしても、てめぇらはこびり付いて離れねえんだろ?」
それに、消すつもりはねえよ。
その言葉を心臓の奥に飲み込む。
「……っああ」
素直に言えば、口から謝罪の言葉を出していいほどコイツ等にとっちゃあ酷な事を言った。
だけど、やっと見つけた俺の道。
やっと出会えた最愛の守りたい人。