散らないサクラ
* * * *
外は糞熱く、蝉どもが短い命を削ってうるさく鳴いてる。
地球温暖化ってのはこんなに酷ぇのかよ、と心の中で悪態を着き俺は居間にある扇風機を着けた(居間と言ってもリョウのうちのだが)。
佐倉の奴は人工的な冷気に弱いとかでエアコンを点けさせてくれねえ。
俺はぜぇ、と喉奥から息を吐き出しソファに倒れ込んだ。
「お、秋おかえり」
キッチンの右の部屋が開き、上半身に一糸まとわないリョウが出てきた。
その後ろから下着姿の女が身を乗り出し、俺がいると分かったのかすぐに奥に引っ込んで行った。
少しの不快に眉を寄せる。
「真昼間からお楽しみかよ」
「俺の仕事は夜からだからな。昼間くらい自由にさせてくれよ」
大きな欠伸をして、髪の毛を掻き毟る。
熱いな、なんてぼやきながら俺の隣に座り煙草をふかした。
佐倉は学校の補修やらなんやらで学校に行っているらしい。
「ちゃんとお別れ出来たのか?」
「……佐倉から聞いたのか?」
少し居たたまれない気持ちを含め、問うとリョウは優しい頬笑みを返してきた。
「いや? あいつは何も言わなかったけど、なんとなく、な」
ああ、そう言うことか。
この人も経験があるのか、チームを抜けるという覚悟を持った事を。
そして抜けた後の、このどうしようもない虚無感も。