散らないサクラ
俺は熱を持ったソファに身を沈めた。
「……なんもする気起きねえけど、でもなんかスッキリしてる」
後悔はねえ。
でも、この脱力した感覚とかあいつ等の賑わう声だとか。
耳の中や頭ン中で木霊して、少しさみしい気持ちさえしてくる。
それと同じくらい、俺は心に掛かっていた霧みてぇなモヤモヤが消えてすぅっとしてる。
ここからが俺の生きる道の始まりなんだと、そう実感する事もできる。
「秋、お前出会った頃よりすげえ言い顔してるよ」
俺の顔をまじまじと見つめ、リョウが微笑んだ。
その意味を謙遜するわけでもなく、驕るわけでもなく、俺は静かに受け止めた。
リョウがポケットから煙草を取り出し、こっちに一本差し出す。
それを受け取りライターで火を点けると、ニコチンがゆっくりと肺に落ちていくのを感じながら吸い込んだ。
リョウはそんな俺からもらい火をすると、煙を盛大に口から吐きだした。
「リョウさん」
「ん?」
「俺、ガッコ行く」
なんの脈略もなくそう言うと、リョウは驚いたのか煙草の煙に咽、ゲホゲホ言い始めた。
俺はそれを横目に見ながらプカプカと煙をふかす。