散らないサクラ


煙草の灰を灰皿に落とし、煙草をそこに押しつぶす。

こんな糞熱い日は水風呂でも浴びるのが丁度いい、そう思って立ち上がると後ろからリョウの呼びとめる声がした。



「今日、俺の店来ないか?」



俺は首だけ振り返り、ちょっと考える。



リョウの店?

……ああ、そう言えばリョウって店経営してんだっけ?



「Ageha?」

「そうAgeha」



リョウはバーのオーナーだ。


詳しくは知らねえけど、自分で店持って結構有名で、系列もいくつかあるらしい。

まあ、こんだけ広い部屋持ってれば親が金持ちか、自分が金持ちかの二通りしかねえから、聞いた時はそこまで驚かなかったけど。



バー、Ageha。

それがリョウの店。



「弥生も連れてさ、今夜おいでよ。秋が成長したお祝いに奢ってやる」



そう言って、女が見たら欲情しそうな顔で笑った(俺は男だからんな事はねえ、つか変態じゃねえ)。


お祝いかよ、なんか見下された言い方だな。

はっ、でも、悪くねえか。




「高い酒、頼んだ」




そう言って俺も笑った。





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