散らないサクラ
俺は番犬の瞳を捕えたまま口を開く。
「俺のチームだ。何をしたってそれは俺が決める事。てめぇに文句言える権利ねえんだよ」
「はっ! あはっ、冷たいねぇ! …………てめえはそれで満足だろうけどなァ、こっちは不完全燃焼なんだよボケェ」
いきなりの解散に戸惑っているのは俺やコスモスの仲間たちだけじゃなく、ケルベロスもそうなんだろう。
いや、もしかしたら今まで喧嘩して取るか取られるかのギリギリにいたやつらもそう思っているのかもしれねえ。
……ここまで俺に執着して来てるって事は、他の奴らよりも情があったって事か。
ちっ、面倒だが、俺はあいつから筋を通す事の大切さを教わった。
それを実現しない限り、俺は小せぇ男のまま。
番犬の吠え面を再び捕えて、口を開く。
「……守りてぇ女が出来た。それを実現するのに、チームの総長は重すぎた。どちらかを守るために、俺はチームを捨てた」
「は、……あはははァはは! ただの腰抜けじゃん! なにそれ、はは、あはァ! 自ら自分を屑だって証明しちゃったの?」
狂った様に笑った番犬をただ無言で見つめ、俺は少し微笑む。
「何とでも言えよ。それを納得としての解散だ。……それに俺は、この決断に後悔はねえし、守りてぇ女の為にこれから生きてけると思うと、人生楽しくてしょうがねえよ」
馬鹿にしたようでもなく、勝ち誇ったようでもなく、自然と零れた笑み。
それが番犬にとって気に食わなかったのだろう。
ギジリ、と奥歯の噛み締める音が俺の耳にまで届いた。
「獅子も女の為に、……誇りも仲間も捨てていくんだ」
俯いた番犬が、ぼそり、と呟いた言葉は小さくて途切れ途切れにしか聞こえなかった。
呟かれた言葉に眉を寄せつつ、番犬の行動に目を光らせる。