散らないサクラ


「いいって言うのに。……ま、今回はあたしも反省するよ。そうだな、よし! 秋、アンタの願い一個聞いてあげるよ」



ニカッ、と餓鬼のような笑みを見せた佐倉。

餓鬼扱いされた気分だ、クソ。

俺は眉間に皺をよせ、鼻で笑う。



「馬鹿か、餓鬼じゃあるまいし。いい、俺がお前を守れなかったのがいけねぇんだ。……もう、俺も気にしねえ」

「おや、そう?」



そう言って今度は優しく微笑んだ佐倉は俺の金髪を梳くと、自分の部屋へと入って行った。

俺は髪に残るかすかな熱と、どっと体に疲労感が押し寄せてくるのを感じながら瞳を閉じると、そのまま意識を手放した。







――――――ドクン、ドクン。



アカイイロ、マッカニソマル、アカイイロ。



手が、真っ赤に染まっている。

誰の血だ、誰かの血。

俺の血じゃない、俺は傷一つついてない。

誰の……、誰の血?



マッカニソマル、ダレカノチ。



目線をずらせば横たわる、人。

誰、誰、誰?

母さん?

いや、違う……、あれは。



―――――佐倉。



アカクソマルノハ、サクラノチ。



『佐倉!』



叫んでも、声は届かない。

手を伸ばしても、彼女には届かない。




< 129 / 300 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop