散らないサクラ
「いいって言うのに。……ま、今回はあたしも反省するよ。そうだな、よし! 秋、アンタの願い一個聞いてあげるよ」
ニカッ、と餓鬼のような笑みを見せた佐倉。
餓鬼扱いされた気分だ、クソ。
俺は眉間に皺をよせ、鼻で笑う。
「馬鹿か、餓鬼じゃあるまいし。いい、俺がお前を守れなかったのがいけねぇんだ。……もう、俺も気にしねえ」
「おや、そう?」
そう言って今度は優しく微笑んだ佐倉は俺の金髪を梳くと、自分の部屋へと入って行った。
俺は髪に残るかすかな熱と、どっと体に疲労感が押し寄せてくるのを感じながら瞳を閉じると、そのまま意識を手放した。
――――――ドクン、ドクン。
アカイイロ、マッカニソマル、アカイイロ。
手が、真っ赤に染まっている。
誰の血だ、誰かの血。
俺の血じゃない、俺は傷一つついてない。
誰の……、誰の血?
マッカニソマル、ダレカノチ。
目線をずらせば横たわる、人。
誰、誰、誰?
母さん?
いや、違う……、あれは。
―――――佐倉。
アカクソマルノハ、サクラノチ。
『佐倉!』
叫んでも、声は届かない。
手を伸ばしても、彼女には届かない。